漢 滝口亮輔(たきぐちりょうすけ)38歳
農家としての心構え「贈り物・売り物は美味しいものでなければ評価に値しない、美味しい桃づくりのため家族、従業員総意で取り組んでいく覚悟が商品の価値を決めるのだ」
滝口は山形県寒河江市の非農家の⻑男として生を受ける。山形市の普通高等学校に進学後、1年生の時に同級生で先祖代々専業農家の妻と出会いお付き合いが始まる。妻は三人姉妹の⻑女であり、実家はラフランス、サクランボ、リンゴ、水稲の生産を行っていたが、この当時、技術肌の妻の父は実子に男子がいないゆえ、否応なしに生産規模を縮小していた。 滝口は元々農業に興味があり就農したい気持ちはあったが、一人で一から就農するのはリスクが高いと判断、それゆえ3年生の時に妻の実家に婿入りし農業を営む決意を下す。
高校卒業後19歳の時に結婚、正式に山形県天童市乱川の滝口家に婿入りすると同時に会社員として商社に就職、農業とサラリーマンを兼業する形で父の手伝いを行う毎日を過ごす。24歳の時、福島県で東日本大震災が起こり、特産品の桃がダメージを受ける中で、「桃の生産で助けて欲しい」という女性顧客らの強い要望の他、滝口自身の「世の中に貢献したい、今こそ新たな品目で挑戦してみたい」という高い熱量があり、家族総意で一から学んで桃の生産を始めるとの決断を下し、品種「あかつき」と「川中島白鳳」の植栽を開始する。
こうした中で27歳の時、満を持して商社を退職、山形県農業大学校に1年間通い、桃を中心とした果樹栽培の専門知識を身に着け、晴れて28歳で専業農家の園主として就農を果たす。その後滝口は徐々に桃の作付面積を拡大し、38歳の現在では1町8反という広大な規模で桃を栽培している。この10年の間、時に果実が雹に当たって傷つき秀品率が大きく低下したり、時に集中豪雨、或いは⻑雨で糖度の低下や果実が軟化し輸送に適さない果実が増産されたりと、様々な苦労を乗り越えながら現在に至る。4児の父である滝口、2年前からは農業に興味のなかった妻が会社員を退職して滝口を手伝う様に、妻や62歳になる現役職人の父、そしてアルバイトの方を雇用し、ワンチームで切磋琢磨しながら最高品質の桃の生産に取り組む滝口の真剣な眼差しは実に逞しい。
山形県の桃の生産量は全国第5位である。温暖な気候を好む桃栽培の北限が山形県ともいえる。それゆえ他産地の桃に比べてじっくり育ち、果肉の締りやきめ細やかさは正しく特級品である。山形の夏は猛暑で有名であるが、桃は「猛暑になるほど美味しくなる」と言われる。その一方、夜は涼しく果実への養分転流は円滑に進んでいく。つまり日中は暑く光合成が旺盛で夜間は涼しく呼吸が少なくてすむご当地天童市ならではの気候を生かした高糖度の桃が生産可能となる。昼夜の温度差がつくり出す樹体貯蔵養分の蓄積によって滝口の桃は濃厚な味を醸し出すのである。
桃の花は春に咲き始める。多くの品種は自家受粉を行うが、花粉の少ない品種、或いは花数が少ない場合は必要に応じて人工授粉を行い、その後は摘蕾作業に取り掛かる。桃は1つの成木に約1000個の結実を目指すゆえ、20cmの枝の間に1個の間隔で着果させていく必要がある。10個の蕾から4〜5個を残し、開花後に梅干し大程の大きさになったら2個残し、更に7月上旬までに形の良い果実を1個残し肥大させていく。ここでの注意点は6 月下旬から7月上旬にかけて桃の種が固まる硬核期であるゆえ、桃に直接触らないように気をつける事である。
滝口は7月上旬から下旬になると一部の品種で雨よけと着色向上のため桃の果実に外内二枚重ねの袋かけを行う。桃は本来無袋で日光がよく当たった方が美味しくなるゆえ、タキグチフルーツガーデンでは早生から中生品種の場合、基本無袋栽培を行っているが、特に雨に当たる可能性の高い「さくら白桃」や「⻄王母」などの晩生種や着色促進を目的とした「太陽のあかつき」のような品種の場合はあえて有袋栽培を行う。こうした品種は先ず袋掛けで光を入れずに白くし、収穫の2週間から10日前に果色が⻩ばんできたタイミングで一気に外袋を外す事で綺麗に赤く色づく点に特⻑がある。外袋を外した後も桃の頭部に被される 内袋は外さない。その理由は、直射日光が頭部に当たって日焼けするのを防ぐ目的と雨水が直接入って腐敗するのを防ぐ目的の大きく2つである。有袋栽培は本来、病害虫対策や鳥害対策の意味合いも兼ねるが当園ではこうした問題はほぼ起きないゆえ、基本的に無袋栽培を主体としているのだ。
桃の着色前には無袋・有袋栽培に拘わらず地面にシルバーの反射シートを張り、反射光を桃の尻部に当てて着色を促す取組を行っている。反射光の活用による太陽エネルギーの最大化を図る事で桃の果実は高糖度かつ色づきも良好になるのだ。この際、桃に直接付着している葉を摘葉し反射光が満遍なく果実に当たるよう工夫するのであるが、へた周りの葉はあえて残して果実の日焼けが起きない様に心掛けている。反射シートを使わずに直射日光を尻部に当てた場合、日焼けして果皮が黑く変色し大幅な品質低下を招く他、変色部が軟化して腐敗、商品価値が失われる問題点を生じ得る。
桃の収穫のタイミングはヘタ周り果皮の緑色→⻩化である。赤色まで熟してから収穫を行うと熟度が進み過ぎて輸送時の品質が落ちてしまうのであるが、とはいえ早期に収穫すると滝口の桃本来の「濃厚な旨味」が感じられないゆえ、品種に合わせた最適な収穫タイミングの見計らいが重要なのだ。桃の収穫期間は10日程度、例えば1本の樹から果実の色づきをみて4回に分けて収穫を行う。目下、滝口が育てる桃の品種は営利品種だけでも日川白鳳、夏かんろ、美郷、太陽のあかつき、まどか、⻩金桃、川中島白桃、さくら白桃、花えみ、 ⻄王母、CX(シーエックス)と11品種、更にその他植栽したばかりの若木を合わせると 十数種類に及ぶ。ご当地でもこれほど多品種の桃を最高パフォーマンスで育て切る生産者は滝口の他存在しない。滝口曰く、「桃の新品種が出たら、そのタイミングで新たな品種を植栽し探究していく鉄石心がなければ、桃の生産者として未熟である」と、常に最新情報に耳を傾け美味しい桃づくりに挑む滝口の謙虚な姿勢は正に篤農家の鏡といっても過言ではない。
収穫期に滝口の桃の樹を良く見ると地面に接地するかの如く、たわわに桃の果実や枝葉が垂れ下がっている。実は収穫期に枝葉全体が上向きに立っている桃の樹の果実は美味しくない。枝葉が立つという事は、枝葉に養分が取られ栄養生⻑に傾いている証拠である。それゆえ、生育後半は果実に養分を転流して糖度を高めていく生殖生⻑を優先した栽培管理が肝要であり、滝口の桃の様に枝葉が下に向かって垂れ下がっている状態こそ、正に美味しい桃の樹を見分ける秘訣となる。
この様に果実の品質を極限まで高める滝口の栽培技術によって出来上がった「桃の鉄人」との異名を持つ滝口の桃は日本全国からの固定ファンが非常に多く、ひとたび各々の出荷先に販売を行うと高単価でも即時完売するほどの人気で、購入したい顧客が後を絶たず毎年予約待ちの状況が続いている。
こうした中、38歳にして「ネット環境で全国のお客様に我が子の様に育て上げた滝口の桃、その名も「桃愛」をお届けしたい、食べて評価してもらいたい」と極鮮マートへの出品に踏み切る。滝口曰く「品種ごとに収穫のタイミングを見計らい、ベストな状態でお客様の手元にお届けする」との事。「商品が到着したらすぐに軽く水洗いし、先ずはそのまま食べて高糖度かつ濃厚な滝口の桃を感じて欲しい」と語る滝口、日本一美味しい桃を目指し、「本当に美味しい桃は生食が一番であるが、少し工夫を凝らすのであれば桃・チーズ・オリーブオイル・塩でつくるカプレーゼは抜群に美味い」と語る滝口、極鮮マートの皆様には最高級の秀品しかお届けしない。「桃愛」の名を冠する滝口の桃はまさしく特級品。これがタキグチフルーツガーデンのこだわりである。
タキグチフルーツガーデンの桃
生育期の適宜液肥処理こそ肥培管理の要
春先に個体間差、土壌間差を見極めながら桃の葉の状態をよく観察し、葉色がうすくなる前に即効性の液体肥料を施す事で葉色が薄くならない緻密な肥培管理を行っている。桃は葉色がうすくなると葉が大きくならず光合成の速度が落ちやすいゆえ、常に一定の葉色を維持していく事が高糖度の桃を安定生産する技術の1つに他ならない。一般的な桃の平均糖度は11度といわれている中、滝口の桃は平均13度、晩生品種で好条件が重なった場合は17度になる個体もあり、滝口の栽培技術の高さを物語っている。
収穫適期の果実を揃える取組こそ食味安定の要
通常、桃の樹体中央部は樹勢が強く(栄養生⻑気味)、樹体先端の枝に向かうにつれて樹勢は弱くなる(生殖生⻑気味)事から、樹勢の弱い先端の枝に結実した果実ほど早熟する傾向にある。それゆえ滝口はより熟する速度の速い樹体先端の果実から樹体中央部に向かって4回に分けて収穫を行う様にしている。こうする事で熟度が同じ桃の個体を揃える事が出来、個体間差の少ない食味の安定した桃を1箱に閉じ込めて、最適なタイミングでお客様に出荷する事が可能となる。
お客様の要望に合わせた品種提案
顧客のニーズは人によって多種多様である。硬い桃が欲しい、柔らかくジューシーな桃が欲しい、⻩色系の桃が欲しいなど個々の要望に応えるべく、タキグチフルーツガーデンでは7月中旬から9月下旬までの2カ月以上の間、早生品種、中生品種、晩生品種を順番に切らさずに出荷していく体制を整えている。この安定感あるニーズに則した対応をし得るのは滝口が11品種という多くの品種を植栽し、品種特性を確り理解した上で⻑期に亘って技術向上に努めてきたからである。滝口の桃栽培に懸ける信念は正に職人魂そのものなのだ。
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