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小原梨園

漢 小原修一 (こばるしゅういち)65歳
農家としての心構え「本質的に良い梨をつくり 良い梨をお出しする、毎朝食べて毎朝食味を確認し収穫して選別を行う、ただひたすらに当たりはずれのない梨をお客様に提供し続けていく、梨づくりの神髄は細部に宿っている」

小原は宮崎県⻄諸縣郡須木村の栗の篤農家(作付面積5町-標高340m)の次男として 生を受ける。
地元の中学校を卒業後、宮崎県立農業大学校の専修科に16歳で入り自己研鑽に励む。18歳からは同校の果樹科専攻で果樹栽培全般に拘わる専門知識を習得する傍ら、 果樹生産で有名な福岡県久留米市田主丸町の接木苗生産現場で研鑽を積む。20歳で大学校を卒業後、実家で就農し、23歳まで兄と共に栗や梅の生産に携わる。

時に昭和57年、23歳の時に大学校時代からお付き合いのあった1つ年上の妻と結婚、 妻の実家が宮崎県小林市でブドウと梨の観光農園を経営しており、小原が移り住んで婿入りして就農、初めから農園の運営を任される事となる。

元来ご当地の梨は「坂下梨」のブランド名で展開され、終戦後に小原家の先祖らが小林市の北部に位置する坂下地区を開拓した事ゆえ名付けられた。坂下地区は標高320mの高地にあり寒暖差や現地の土壌条件が梨やブドウの植栽に適している。昭和36年に梨の植栽を開始、続いてブドウの植栽が開始され、昭和50年には梨狩り&ブドウ狩りの「坂下梨 観光農園4号園 小原梨園」開園という歴史の中で、地元はもとより、県内外から高い評価を受けてきた名園が小原梨園である。現に昭和60年度において第28回宮崎日日新聞社 農業技術賞を受賞し、その技術の高さが証明されているのだ。

昭和57年当時、小原梨園では梨6反、ブドウ4反と合計1町の作付面積があり、梨の品種は元祖和梨の菊水、幸水、新興、新高、愛宕の5品種であった。その後、平成元年に菊水を切って豊水に品種変更、同年雑木林5反を購入、平成3年に雑木林7反を購入して開墾、 伐採樹を販売して造成費を捻出し、合計2町2反の広大な樹園地を確保する。

全体的に小原の樹園地は傾斜を利用した赤土系の排水性の良い土壌であり、高品質の梨生産に最適な土質条件を整える事となる。

その後、平成5年から6年にかけて、小林市を襲った巨大台風でほぼ全ての果実が落果し農園経営体として大打撃を受ける。当時は農業収入保険制度が充実しておらず収入が全くない状態に陥った。小原は今後経営を継続すべきか心底悩んだが、地域のため、子供のために奮起し次年度には経営を立て直す。

基幹5品種の幸水、豊水、新興、新高、愛宕に加えて、 50歳の時に秋月、54歳の時にあきあかり、60歳の時に甘太を植栽するなど、常に新たな気持ちで新品種の栽培研究をし続けている。

特に小原の「愛宕梨」は1kg近い巨果の赤梨で独特の芳香、柔らかで⻭切れのよい口当たり、みずみずしい食感は別格である。「愛宕梨」は洋梨のラフランスに同じく収穫後の追熟を経て食味を増す貯蔵品種であり、小原がつくる「愛宕梨」の熟成後の食感は他の梨生産者を大きく凌駕するところで有名である。

こうした中、57歳の頃より栽培地である小林市の冬場の気温が上昇し、梨の樹が休眠しない点が大きな問題となった。従来は収穫が終わった後に「秋のお礼肥」として堆肥を施していたが、未休眠の梨の樹は堆肥の肥料分を吸って低温期も成⻑し続けるがゆえ、新芽が動いて耐寒性が低下し冷え込んだ日に凍害を受けやすくなるゆえ、小原は4年前よりお礼肥の施用を中止する。近年の暖冬で12月や1月に新芽が動いてしまい凍害を受けて新芽が枯死すると、肝心な2月に新芽が吹き出さず春に良い花が咲かなくなる事がご当地の問題となっている。それゆえ小原は2月末から3月頭にかけて完熟堆肥、有機質肥料、有機石灰を樹の生⻑具合に応じて与えている

梨の樹は個体間差が激しいゆえ、個々の生⻑を見極めながらその個体に合わせて肥料の投下量を変えるという小原しかできない千里眼で肥培管理を行っている。化成肥料ではなく牛糞、豚糞、鶏糞を最適な割合で混合し完全発酵させた完熟堆肥と骨粉、油粕、魚粉入りの有機質肥料、有機石灰の3資材を活用して土壌改良に取り組み、土をふかふかにして毛細根が自然と張りやすい環境を整える事により「安定した高糖度の食味」を実現している。更に、12月から2月にかけての冬剪定で次年度を見据えた樹姿を想像しつつ枝数を適正に管理する事で年明け栽培管理の円滑化を図っている。

ブドウに比べて梨の栽培は技術的に難しい半面、非常に面白く樹勢コントロールを上手に行えば行うほど、その努力に答えてくれる果樹である。梨は4月の開花期に大きなエネルギーを消費し、5月中下旬になると樹の中の貯蔵養分を使い果たすゆえ、最適な時期に個体間差を見極めて追肥を施す必要があるが、追肥だけに頼るのではなく樹々の生⻑に合わせた最適なタイミングで摘果を行う事で樹勢を維持し、樹の状態を健全に保つ事が重要である。

この様に人智を超越した栽培管理によって出来上がった「梨の神様」との異名を持つ小原の梨は日本全国からの固定ファンが非常に多く、毎回自社の直売所で販売を行うと瞬く間に完売してしまうゆえ、購入したい顧客が後を絶たず毎年予約待ちの状況が続いている。小原の梨は毎年開催される小林市の品評会で最上位となる「優等賞」を新興、新高、豊水で毎年の如く受賞しており、その評価たるや折り紙付きである。

こうした中、65歳にして「ネット環境で全国のお客様に我が子の様に育て上げた「小原旨梨」をお届けしたい、食べて評価してもらいたい」と極鮮マートへの出品に踏み切る。小原曰く「どの個体、どの部位を食べても食味が変わらない果樹職人の本物の梨を味わって欲しい」、「ひたすらに旨い梨を追求し続けた結果たどり着いた大玉志向で高糖度の梨をお客様の口に届けたい」との事。「商品が到着したらすぐに軽く水洗いし、冷蔵庫に2時間入れてから食べて欲しい」、「梨は一般的に下部の糖度が高いので上部から下に向かって食すと最高に美味しい」と語る小原、日本一美味しい梨を目指し、「本当に美味しい梨は食べた瞬間にわかる、そのジューシーさたるや別格」と語る小原、極鮮マートの皆様には最高級の秀品しかお届けしない。「小原旨梨」の名を冠する小原の梨はまさしく特級品。これが小原梨園のこだわりである。

小原梨園の梨

「樹体ジョイント仕立て法」を活用した樹形で栽培を行っている

従来、ナシの仕立て方は「開心自然形」という3本乃至4本の主枝を放射線状に伸ばし、 亜主枝・側枝・結果士枝を出す整枝法がとられるが、小原は神奈川県農業技術センターが開発、特許を取得した、果実の早期生産量回復や作業の省力化&効率化が図れる「樹体ジョイント仕立て法」という仕立て方を積極的に取り入れている。

当手法では地面と水平に主枝が伸びる様に育て、隣の樹に接木し連結を図る。直線状の集合樹形として育てるゆえ、 枝葉を左右のみに伸⻑させるだけで剪定作用が極めて簡便化できる。直線状に伸びる枝であるゆえ、空間を効率的に活用出来、作業の導線が円滑になる事から、剪定・収穫が効率的に行える他、均一な果実の大きさに育てやすい点に特⻑がある。
果実の太りは「開心自然系」の方が良好であるが、全体的に樹高が高くなるゆえ高段に着果した果実と低段に着果した果実とでは、日当たりの悪い低段に着果した果実の糖度が低い傾向にある。更に樹体の先端と中央部で果実の食味を比較すると日当たりの悪い中央部の果実の食味が落ちる傾向にあり、先端に比べて中央部の果実の収穫は最後に行う必要がある。この様に、 着果部位によって品質のバラツキが大きくなってしまう点は既存仕立ての問題点と言える。
その一方、「樹体ジョイント仕立て法」では果実の着果部位は常に同段位であり、葉に当たる光は常に均一となり、光合成で得られし養分を均等に果実に転流させ得るゆえ、 着果部位に拘わらず梨の食味、品質を安定せしめる事が可能となる。

徒⻑枝の健全管理による果実の食味安定技術の確立

徒⻑枝とは真上に伸びた枝や混みあった枝の事を示す。徒⻑枝の剪定によって他の枝に養分の分配が出来、果実個体毎の食味のバラツキを大きく減らす事が可能となる。徒⻑枝の剪定時期は基本的には冬季であるが、徒⻑枝が必要以上に伸びている場合は夏季に剪定を行う事も重要である。通常、樹体中央部は樹勢が強く、樹体先端は樹勢が弱くなる事から中央部の方が栄養生⻑気味となり果実の食味は落ち易い。それゆえ小原は樹体中央部から伸びた徒⻑枝は強剪定、樹体先端から伸びた徒⻑枝は弱剪定を入れる事により樹体全体の栄養生⻑と生殖生⻑のバランス調整を図り、個体間のバラツキのない果実生産を心掛けている。小原は⻑年の経験から個々の梨と会話する事が出来、その個体の生⻑具合に応じた徒⻑枝の剪定を行い得る達人である。

有袋栽培を行い高品質の果実を生産している

小原の梨は高品質の果実生産を目的に、6月から7月下旬まで全品種で果実1つ1つに紙製の袋をかけて成熟させる有袋栽培を行っている。仮令、梨の篤農家であっても品種やタイミングによって無袋栽培を行うケースも多いのであるが、小原は非常に手間のかかる有袋栽培に拘っている。

その理由は

  • カメムシを中心とした病害虫対策
  • 強光による果実の日焼け(黒ずみ)対策
  • 外傷がつかないよう果実を守る目的

大きく3つである。

小原は出荷可能と判断するタイミングで何千何万個とある梨の袋を必ず開けて1枚ずつ捲って中の色を見て、過去からの経験則で選定後、その中から出荷可能と判断したものだけを出荷している。判断に悩む場合は必ず実食して、判断と結果に相違ない場合のみ出荷している。小原曰く、「秀品でない梨は一切妥協せず出荷しない、何故妥協しないかというと、美味しくなければお客様に申し訳ないから、美味しいもの以外は本質的に商品とは言えない」と断言する。ここまでしてまでお客様に本物の梨をお届けしたいという小原の男意気には本当に頭の下がるところである。

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