代表 與儀美奈子(よぎみなこ)
農家としての心構え「二人の叔父から受け継いだマンゴー生産、より上質でより美しく、何よりも大きなマンゴーを消費者のお手元に届けたい。我が農地を守り、そして地力を高めていくことで、本当に美味しいマンゴーを生むのだ」
マンゴー農園になるまでの歩み
與儀さんは幼い頃から、叔父のマンゴー園に親しんできました。時々遊びに行ったり、手伝ったりすることもあり、兄と一緒にマンゴーの木を植えた思い出もあります。
生き物が好きだった與儀さんは、高校や大学でも農業に関連する学科を選びました。しかし、当時は叔父の農園を引き継ぐつもりはなく、自分の興味に基づいて進路を考えていました。
大学を卒業した後、特に進路が決まらず、恩師の勧めで叔父のマンゴー農園でアルバイトを始めます。叔父は兄弟で約1500坪のマンゴー園を経営しており、多い時には2万個ものマンゴーを出荷していました。
しかし、農地の返還が進み、農園は縮小。與儀さんが入った時には、5年後に返却しなければならない土地もありました。そんな状況で働き始めて数か月後、叔父が引退を決意。もう一人の叔父も農園を継ぐつもりがなく、跡取りが決まらない中、與儀さんにその役割が回ってきました。
正直、迷いがありましたが、叔父たちが長年育ててきたマンゴー園を潰すのは嫌で、農園を引き継ぐことを決めました。
農園の未来を切り開く取り組み
農園の問題
與儀さんは農園を引き継ぐと決めたものの、多くの課題が待ち受けていました。農地の返却問題、市場に依存した出荷体制、そして過密栽培。そんな課題を解決しようと叔父に相談するも、「まず自分たちのやり方を学べ」といった態度でした。
これでは農園の未来が危ぶまれると感じた與儀さんは、大学の先輩のアドバイスを受けて、南部普及センターに相談しました。そこで、同じような苦労をしている農家が多いことを知り、農業経営を見直し、改善する決意を固めます。
経営改善
まず、返却予定の土地に代わる新しい農地を探すことが急務でした。糸満市役所と何度もやり取りを重ね、新たに糸満市大里に土地を確保しました。また、市場への依存を減らすために、直売のお客様や直売所などの販路を増やし、安定した収入を得ることに成功。さらに、過密栽培を改善するために、間伐を行い、作業効率の向上と品質の向上を実現しました。
農業コミュニティとのつながり
農業経営を改善する中で、與儀さは農家の友達がほとんどいないことに気づきます。そこで、糸満市農業青年クラブを再び立ち上げ、他の若手農家との交流を深めました。その活動が評価され、農業大学校から講師依頼を受けることも増えてきました。
今では、叔父から與儀さんの経営へと農園が移行しつつあり、単に問題を解決するだけでなく、「沖縄らしい農家」を目指して日々努力しています。
糖度を高める
與儀さんの農園では、マンゴーの糖度を上げるために、以下の取り組みをしています。
・管理しやすいように低めの枝づくり
高い枝を曲げる、又は伐採してできるだけ人の胸下の高さぐらいの高さにそろえています。また、立枝と呼ばれる樹勢の強い枝を早めに除去、又は誘引することによって、低い木を維持しています。
・9,10月のPK肥料
マンゴーは収穫後から新芽を出て、来年のマンゴーに向けて準備を行います。ただし、10月まで新芽を吹かせると実がなりずらく、その後の誘引でも高さのばらつきが出てきてしまいます。そこで週一回のPK肥料を葉面散布することで、相対的に窒素を抜き、樹の栄養成長止めることを心がけています。
・枝先をしっかり上げる
誘引後のマンゴーは枝先をしっかりあげて、葉に均等に太陽を上げることで光合成を促します。
・4、5月の液肥
この時期はマンゴーの花が終わり小さな実が結実します。これから肥大期を迎えるマンゴーに多くの肥料を効かせるために液肥を多く土壌に流します。個体肥料に比べ、液体肥料が吸収力もよいので、水管理も行いながら液肥を週一回の頻度で施肥を行います。
與儀農園のこだわり
與儀農園では、特に以下の3つのポイントにこだわっています。
1.大玉マンゴーの栽培
摘果を行い、1つの枝に1個の実だけを残すことで、マンゴーが大きく育つようにしています。通常は300~450gのマンゴーが主流ですが、與儀さんは500g以上の大玉マンゴーを目指しています。
2.土壌へのこだわり
與儀農園の土は「ジャーガル」と呼ばれる土で、果樹栽培には向いていない粘土質の土壌です。しかし、カルシウムなどの栄養が豊富で、独特の味を持つマンゴーが育ちます。この土地の特性を理解し、土壌のバランスを取るために酸性肥料や土壌改善資材を使っています。
3.太陽の光を最大限に活用
マンゴーの袋掛けは通常、日焼け防止や傷を防ぐために行いますが、與儀さんは収穫直前まで袋を掛けずに太陽の光をマンゴーに当てています。これにより、真っ赤なマンゴーが育ち、味も濃厚になります。
これらの取り組みを通じて、與儀さんは「沖縄らしい農家」を目指し、日々マンゴー作りに励んでいます。
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