吉澤 勝範(よしざわ かつのり)
農家としての心構え「進化する農業、進化するショウガ生産こそ我が神髄」
吉澤さんは、熊本県宇城市小川町のショウガ農家の⻑男に生まれました。父の勝矢さんが63年にわたりショウガ生産に取り組む姿勢を見て育ち、幼少時代から父の手伝いを自発的に行いました。
高校時代は熊本市の私立高校に通いサッカーで全国大会に出場するまでの逸材であった吉澤さん。高校卒業後は大学に進学し、翻訳者になるべく海外留学の夢もありましたが、父のショウガにかける思いに心を打たれ、地元企業に就職しました。
24歳で家業を継ぐべく実家に戻った吉澤さんは、父が別途取り組み始めていたハウス建設事業の手伝いをしつつ、土佐一ショウガの栽培を開始。
その後30歳で結婚、子どもが生まれた年に父がガンで倒れ、33歳までの3年間はハウス建設事業とショウガ生産事業を一人で兼務。睡眠時間もまともに取れない状態でした。
34歳の時、父が闘病治療から回復して復帰したのを契機に、ハウス建設事業を法人化。株式会社吉澤工業として独立し、その代表に勝範さんが就任。この際、父はショウガ生産に専念し、ハウス建設事業を退く形となりました。
37歳の時、土佐一ショウガからフィリピンショウガに品種変更。
39歳の時、吉澤農園のショウガの優位性を証明するために専門機関に香気成分、辛み成分の分析を依頼しました。生産量日本一の高知県産、5位の宮崎県産、中国産との比較検証を行い、いずれも吉澤農園産ショウガの顕著な優位性が認められました。
体を温める効果のある2つの辛み成分に「ジンゲロール」と「ショウガオール」があります。
ジンゲロールは生のショウガに多く含まれていて、血流を良くし、免疫力向上や発汗促進、手足の先等を温めます。
ショウガオールは100℃に加熱、あるいは乾燥することで得られる成分で、ジンゲロールよりも胃腸を刺激し、体を深部から温める効果が高いです。
吉澤さんの囲いショウガは、ジンゲロールが他産地のショウガに比べて最も低いことから、辛さが控えめであることが数値的に表れています。
また、香気成分であるゲラニアールは爽やかなレモンのような香りで、100℃に加熱することでゲラニオールへと変化し、バラのような香りに変化します。
このゲラニオールは臭いのマスキング効果があり、嫌な臭いを減少させる効果が期待できます。
そのため吉澤さんのショウガは他産地のショウガと比較して、常温ではゲラニアールの値が最も高いことから爽やかな香りが最も強く、100℃加熱条件ではゲラニオールの値が最も低いことから、食材が持つ繊細な香りを邪魔しない上品な消臭効果があることが数値で証明されました(上記図表参照)。
要するに吉澤農園のショウガは味や香りの繊細な日本料理や、消臭ができない新鮮な食材に組み合わせることで、その性能を発揮することが証明されたのです。
熊本県のショウガ栽培の歴史は古く、大正末期から旧東陽村(現八代市東陽町)にて始まりました。しかし昭和46年頃から水稲の生産調整や、元来メインの生産品目だったカンキツの市場価格暴落を受けて、宇城市小川町でもショウガの栽培面積が広がって現在に至ります。
小川町の中でも吉澤さんのショウガは、昼夜の温度差が激しく、栽培に適した砂質土壌で、さらに綺麗な湧水を用いて生産されるので、他のフィリピンショウガと比較しても別格の芳香成分と食味を実感できます。
吉澤さんは40歳の時、食の安全や環境保全に取り組む農場に認められる「JGAP」を取得し、世間的にも大きな評価を受けました。
41歳の時、ハウス事業の顧客から、ハウス内でサーモンの養殖を行う新たな事業展開の打診を受け、ビニールハウスと生け簀がセットになったデモハウス、モデルルームを建設、販売展開のサポートを行い、取引先から多くの注文を受けています。
このような、ショウガ栽培のみならずハウス建設事業にも従事してきた吉澤さんですが、42歳の時に初心に戻りショウガの生産に注力することを決意。ハウス事業で一定の成果を上げたという自負と、父の年齢、体調を考慮し、「ショウガ栽培に命を懸ける」との強い気持ちで英断。43歳になる今年、父の勝矢さんから本格的にショウガ生産事業の経営移譲を行う予定です。
安価な中国産のショウガが出回る中、吉澤さんが高品質なメイドインジャパンのショウガ生産にこだわる心意気は勇敢そのものです。吉澤さんのショウガは大変評判が良く、取引先からの信頼度が非常に高いので、購入希望の顧客が後を絶たない状態がつづいています。
こうした中、ネット環境で全国のお客さまに我が子のように育て上げた、爽やかな香りのショウガ、その名も「爽香ショウガ」をお届けしたいと極鮮マートへの出品に踏み切ります。
吉澤さん曰く「香りの乏しい外国産のショウガが市場に多く出回る中、メイドインジャパンの強みは味と香り」、「代々培われてきた熊本の風土、小川町の古き良き本物の味を皆さんにお届けしたい」とのこと。
ショウガは収穫時期によって「新ショウガ」と「囲いショウガ」に分類されます。
新ショウガは10⽉~11⽉の短い期間に収穫されるショウガで、水分量が多く⽩くて⾚みが差している点が特長です。爽やかな香りでフレッシュな甘みがあり、囲いショウガに比べると辛みが控えめです。また、皮がうすく繊維が柔らかいので、甘酢漬けや佃煮、ジンジャーシロップ、炊き込み御飯に向いています。
一方、囲いショウガは12⽉~翌年6⽉まで出荷されるショウガで、新ショウガを10⽉~11⽉に収穫後、2か⽉以上貯蔵してから出荷を行います。保存中に水分が減少するので繊維質が多めで、長期間保存するほど辛みが強く、主に薬味や香辛料として活用されるケースが多く、紅ショウガにも向いています。
吉澤農園では最先端の定温、定湿の貯蔵用倉庫を完備していて、いつでも鮮度抜群の囲いショウガを直送する体制を整えています。このような設備を持っている農園は滅多にありません。
「新ショウガは⻭ごたえを楽しみ、囲いショウガはすりおろして生で食べてほしい」とは吉澤さん談です。
吉澤農園のこだわり
水・土質・栽培環境の3つの風土を活用した栽培体系
ショウガの水分量は約90%もあるので、品質が水質に大きく影響を受けます。吉澤農園のショウガは熊本県八代市の秘境「五箇荘」が源泉で、自然に湧き出るミネラル水を活用しています。
吉澤農園の畑はきめ細やかな砂質土壌で、山々に囲まれた土地であることから、山から流れ出る豊富なミネラルが圃場に流れ込むので、さらに美味しいショウガを生産できます。
農園の栽培環境、特に日照条件はショウガの生育に最適で、また、昼夜の寒暖差が激しい土地柄であるため、地下部(根)への養分転流が円滑に進み、大きく立派なショウガを生産できるのです。
農薬使用量削減の取り組み
ショウガの地上部(葉や茎)は、蛾の幼虫に捕食されやすいので、時に防蛾灯で蛾を寄せ付けにくくし、時に誘蛾灯で蛾を誘殺することで食害を減らしています。
また、天然のにがりを葉面散布することで⽩星病の発病を抑えたり、さらにはセンチュウが嫌う椿油を土壌に投入することで忌避効果が高まり、化学農薬の使用量を抑えることに成功しています。
土づくり
ショウガは繊細で、連作すると土壌病害に罹りやすく、またセンチュウ被害を受けやすい農産物です。そのため60年以上かけて土壌改良に取り組んでいます。
熊本の雄大な自然で育った鶏糞、有機肥料、納豆菌を土壌に毎年投入するほか、ソルゴーやイタリアンライグラスを緑肥として土壌にすき込み土中の菌体バランスを整えています。
連作障害を受けやすいショウガですので、一度栽培した圃場は2年間使わず地力を回復させることで、秀品率の高いショウガを安定して生産する独自の生産体系を有しています。
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